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サイナスフロアエレベーションの手順
上顎の臼歯部分にインプラントを入れる場合、埋入する部位の骨の厚さが10ミリメートル以下という状況は多く見られることです。臼歯部にインプラントを入れる時は、最低10ミリメートルの長さのインプラントが必要です。骨の厚さが10ミリメートル以下の場合は、上顎洞底の粘膜をオステオトームという外科器具を用いて、その粘膜を少しずつ挙上していくと、綺麗な円形のドーム状の形状に膨らんでいきます。このドーム状の骨補填剤が4-6ヶ月程経過すると、新生骨に満たされて硬くて丈夫な骨に熟成していくのです。この手術で大事な事は骨補填剤を少しずつ入れて、レントゲン写真で上顎洞内の状態を確認しながら確実に挙上していくことです。このケースでは、インプラントのネックの部分にGBRを施して骨の不足していた骨頂の箇所に骨を作っています。
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肩こりが治った!
Mさんは左上の大臼歯部をなくして、長い間咬み合わせが悪く、ひどい肩こりに苦しんでいました。最初の画像を見てください。上の大臼歯がなくて、下の歯が上顎の歯茎に直接当たっています。このように咬合(咬み合わせ)が悪いと、脊椎に様々なゆがみが出てきて、まっすぐなはずの背骨が曲がってしまい、不定愁訴と言われるいろいろな全身的病状が起こってくるのです。異常な顎位がもたらす周辺の筋肉の収縮・緊張という無理が頚椎にかかると、頚椎周辺のいくつもの大切な神経系を害することになり、全身に大変な事態を引き起こすのです。
そこで上の顎の歯茎に当たっていた下の歯の咬合面を、理想的な咬合平面に合わせて製作し直し、上顎の歯のない場所には、インプラントを二本入れて修復しました。二番目の画像がその写真です。そうして咬合がよくなったMさんが、最初に言った言葉が、「いろんな病院に行っても、どうしても治らなかった肩こりが治りました」です。よかったですね。このインプラント治療で、Mさんの全身的な症状が改善されたものは、偏頭痛、肩こり、首筋のこり、手のしびれ、不眠、慢性鼻炎、疲れ眼、関節の痛み、足の疲労感です。咬合が全身的な症状といかに深い関連があるか認識させられる症例です。
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唇と頤(オトガイ)孔
皆さんは体の中で唇がどんなに敏感な部分かよくご存知でしょう。唇は美味しいものを食べる時も、また最愛の異性と接吻する時も、最も敏感に感じる場所です。その最も感じる唇の下の方を支配しているのが、頤(オトガイ)神経という重要な神経です。このオトガイ神経が顔のどこを走っているかというと、最初の画像の説明にあるように、下顎骨にあるオトガイ孔という骨の穴を通っているのです。オトガイ神経は下顎骨の中を通っている大きな下歯槽神経が下顎第二小臼歯の下方で枝分かれして、オトガイ孔から出てきます。二番目のCTの画像からも分かるように、硬い皮質骨がこの神経を管状になって包んでいるのです。ですからこの場所にもしインプラントを埋入する場合は、下顎骨の下部に存在している下歯槽神経とこのオトガイ神経の双方に損傷を与えないように細心の注意が必要なのです。この部位のインプラントの埋入が下顎では最も難しいといわれる所以です。特にインプラントを入れる三次元的な方向が重要です。そのために手術を行う場合は、綿密なレントゲンの診断とCTの解析診断が必要になるのです。
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ここまで可能になった、咬合機能の回復
再生医療やインプラントの治療を行っていると、信頼するテクニシャン(技工師)の製作した技工物を患者さんに装着して時々はっと驚くことがあります。この患者さんのカスタムアバットメント(円筒状の金属部分)をよく見てください。感心する位完璧に美しく作られています。素材は人体に最も親和性のある白金加金です。このカスタムアバットメントの下には、長さ14ミリメートルの強力なインプラントが入っています。その周囲のピンク色の歯肉をご覧になってください。とても、75才の歯茎とは思えないでしょう。この上に被せ物の歯が入れば、どんなものでも思いっきり咬むことができるでしょう。人の歯も臓器ですから、インプラントは人工の臓器なのです。これ程完璧な人工臓器は他にありません。人間が作った心臓や腎臓もまだまだ未熟な存在なのです。かけがいのない歯を喪失しても、ここまで完全に回復できることは、我々歯科医師の大きな喜びなのです。
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最近のサイナスフロアエレベーションの一例
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Iさんの治療結果は良好
Iさんが、おととし来院された頃は、上顎の前の方には、小さな部分入れ歯を入れてあり、下顎の右奥にも中くらいの部分入れ歯を入れてありました。それを食事の度にはずして、洗われていました。部分入れ歯は物を咬む時に、動いたり、食べ物にくっついたりするので、おいしく食事ができません。そんな義歯が上にも下にもあつたら、どんな美味しい食べ物でも満足感は得られませんよね。Iさんは体の方はいたって健康な人でしたから、歯茎や骨の再生が良好でスムーズにインプラント治療ができました。来院時のパノラマレントゲン写真と現在のパノラマレントゲン写真です。歯のなかった所に、すべてインプラントがしっかりと入ったので、今では何でも食べられるようになりました。咬み合わせがよくなったので、左右の顎の関節の状態がよくなり、姿勢もよくなり、表情にも明るさがもどってきました。Iさんは、自宅でとれたタケノコや、大きな栗をたくさん持ってきてくれます。とても美味しいのでありがたいです。
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インプラントはここまで向上した
最初の画像を見てください。インプラントを埋入した骨が思ったより脆弱で肉芽組織を含んだ柔らかい骨質であったために、埋入の方向がずれてしまっており、インプラントの上部は骨が吸収して数ミリ下がっている部分が観察されます。しかし五年後の次の画像を見てください。吸収して下がっていた骨は再生増殖していて、手術前の骨面より盛り上がっているのが認められます。インプラントの周囲の骨は骨密度が高くなり、相当な咬合力にも耐えられる状態にリモデリングしているのです。これは我々歯科医師にとっても、又患者さんにとっても、素晴らしいことなのです。インプラントにかかる咬合力が適正であれば、インプラントの周りの骨は咬合することによって、しっかりと咬めるように骨化していくのです。これは生体がインプラントを自己の組織として臓器として認めているということです。それが何よりもすぐれた素晴らしいことなのです。
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インプラントの埋め込み手術は難しいのか?
インプラントの埋入(埋め込み)は、平らな木材に木ねじをドライバーでねじ回して埋め込むような容易なものではありません。なぜなら、人間の顎の骨は表面は皮質骨といって硬い骨の部分と中の方の海面骨という柔らかい骨の部分があって、さらに海面骨の中も硬い部分とほとんど骨がない肉芽組織や脂肪組織のような極端に柔らかい部分も存在しているからです。骨にドリルで穴を開けていく時、ドリルの先端は硬い骨にぶつかると、柔らかい方に逃げてしまいます。ですから思った通りの方向に打ち込んでいるつもりでも、少し角度がずれていたりするのです。慣れてくると、ドリリングしている時に硬い骨をよけて、ドリルの先が動いているのが分かるようになってきます。予定した方向にまっすぐに打ち込む必要があるなら、硬い骨の方にある程度力を加えなくてはなりません。これも一つの技術です。複数のインプラントをどうしても平行に打ち込みたい場合も、ドリルの先端が骨の柔らかい方に逃げるのをできるだけ抑えなければなりません。下のレントゲンの画像のように、二本のインプラントを平行に埋入する場合、右側のインプラントの周りの骨はGBR(骨造成術)で作られて三ヶ月しか経過していないので、その部分は柔らかいことを念頭において対処しなくてはなりません。埋入する骨が柔らかい場合は、最終のドリルの太さを一つ細めのものに代えたり、最終ドリルのドリリングを所定の深度よりいくらか浅くするなどして、インプラントの初期固定を確実にするのも、また一つの技術なのです。
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インプラント治療の大敵は、何?
下の一枚目の画像をご覧になってください。インプラントの周囲の歯肉がひどい炎症を起こしています。インプラントの歯肉が腫れて盛り上がり出血しています。これは患者さんがインプラントの手術をした後、術者の言った注意事項を守らずにあることを行ったのが原因です。それは一体何でしょうか。この患者さんは青果市場で働いていたため、午前一時、二時に起きなければならず、慢性的な睡眠不足になっていたのも一つの原因です。あることとは、喫煙です。タバコの煙に含まれたニコチンは有毒であるため、インプラントに付着するとその周囲の歯肉は循環機能障害や栄養障害のため炎症を起こしてしまいます。こうなると歯肉の下の骨の部分まで炎症が波及してしまうので、インプラントが骨にしっかりと固着することにも影響してしまいます。インプラントの大敵はタバコなのです。この患者さんは、その後喫煙をなるべく控えてもらいレーザー治療と抗生剤の投与で正常な歯肉の状態に回復しました。今では歯が入ってしっかりと咬めるようになっています。二枚目の画像をご覧になってください。インプラントの手術をした後の正常な歯肉の状態です。綺麗なピンク色をしているのがお分かりになると思います。インプラントの手術をしたら、四、五日は柔らかい食事をとり喫煙はしないようにしましょう。手術をした部分は傷が治るまで歯磨きは避けてください。うがい薬で一日に三、四回うがいをしましょう。三週間から四週間したら、歯肉が落ち着きますから、それからはインプラント専用の柔らかい歯ブラシを使用するとよいでしょう。手術をして三ヶ月程でインプラントが骨にしっかりと結合しますから(これをオッセオインテグレーションと言います)、それから歯が入ることになります。
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上顎7番のサイナスフロアエレベーション
上の歯もそうですが、下の歯も親知らずの手前の第二大臼歯を歯周病で喪失してしまう人はたくさんおられます。喪失してそのまま放置しておられる方も数多く見受けられます。このような場合に56を土台にして延長型のブリッジにしたりしますが、それがあまり長持ちしないことは素人でも理解できるところです。長期に渡ってしっかりと咬めるようにするのならインプラントがいいですよね。下の最初の画像を見てください。歯周病で第二大臼歯がなくなっています。これではうまく咬めませんから、インプラント治療をすることにしました。歯槽骨が不足しているからまずGBRを行い、骨化するのを待ってサイナスフロアエレベーションをして上顎洞底を上げてインプラントを埋入し同時に追加のGBRを行っています。この患者さんは小太りのメタボリックシンドロームを持った方ですから、サイナスフロアエレベーションは歯槽頂からアプローチするにしてもラテラル(側方)からアプローチするにしても、かなり難しいことは覚悟しなくてはならないでしょう。分厚い頬粘膜の肉を掻き分け掻き分けしながら、手術を行わなくてはなりません。ラテラルの場合は上顎洞内を直接見ることはできませんから、ミラーテクニックを多用しなくてはなりません。ひたすら忍耐です。上顎洞粘膜を傷つけるリスクが高いから十分に注意が必要でしょう。歯槽頂からオステオトームを使用する場合も粗造な造成骨の上から行うため最初のドリリングの位置と方向をしっかりと見極めることが大切です。そのためにはできるだけ正確な外科用のステントを作っておかなくてはなりません。信頼できるステントがあれば、この手術は成功に導くことができます。今から7番単独のインプラント治療の需要はますます大きくなるでしょう。インプラントを志す歯科医師向けのブログになってしまいました。申し訳ないです。
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