• ああ、あの頃は-1 【歯界時報 2001年11月 No.559】

    街中を車で通っている時、赤信号で停車していると、左手の古びた家並みの中に**木工所という看板を見つけた。玄関の木のガラス戸は古ぼけて煤けており、柱は少し傾いていて下の土間との継ぎ目には赤く錆びくれた鉄の接ぎ当てがしてある。一寸ほどあいたガラス戸の隙間から一人の老いた職人が木片の中に埋もれて仕事をしているのが見えた。

    そうだ、子供の頃こんな木工所を何度か訪ねたことがあった。投げ独楽を作ってもらうためだ。

    あの頃、子供達は自分の好きな独楽を作るためにまずボロヤとかバタヤとか呼んでいた廃品回収業者のところへいって、高さが10メートルもある不燃物のガラクタの山の中から錆びくれた自動車のベアリングを探し出し、何十円か払って家に持ち帰った。

    固い石の上で大釘と金づちで叩いてベアリングのボールを外して、金属の輪だけにするとそれをペーパーなどでよく磨いてぴかぴかにした。

    それから颯爽と自転車に乗ってロクロヤと呼んでいた木工所に行ってこのベアリングにぴったりの独楽を作ってもらった。旋盤のような機械の上には大きなゴムベルトが天井から張ってあって、適当な大きさの木片を木槌で叩いて固定すると、ゴムベルトが回りだし固定した木片も回りだした。それを木工所のおっちゃんが盤のような鋭い刃を使って削りだしていく。ほんの数分で見事な独楽が出来上がった。二百円ほど払って家に持ち帰り、独楽の大きさに合う鉄製の根を独楽の尻に真っ直ぐに打ち込んでやる。打ち込みが終われば、投げ独楽の出来上がりである。

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